障害年金とはどのような年金か、ご説明いたします
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などに支障が出るようになった場合に受け取ることができる国の年金です。障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。(障害共済年金は、平成27(2015)年10月1日施行の被用者年金一元化法により障害厚生年金に統一されました)
障害基礎年金には、1級と2級があり、障害厚生年金には1級、2級、3級があります。障害等級は年金法施行令別表に定められており、概要は次の表のとおりです。なお障害者手帳の等級は別の法律(身体障害者福祉法第十五条)に定められています。
障害の程度 障害認定基準(日本年金機構)3頁より抜粋
等 級 | 障 害 状 態 の 概 要 |
1 級 | 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2 級 | 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限をうけることを必要とする程度のもの |
3 級 | 労働が著しい制限を受けるか、又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
年金は高齢者だけを対象としているわけではありません。若い方でも、障害によって生活の安定がそこなわれる場合は、社会みんなで共同連帯して防止しましょう、というのが障害年金の目的です。障害年金は憲法の理念に基づいた国の年金であり、次のように国民年金法に定められています。
国民年金法 第一条 [目的] より抜粋 |
障害年金はどなたでも受給できるわけではありません。障害年金を受給するためには次の3つの要件が必要です。
① 初診日要件
② 障害該当要件
③ 保険料納付要件 です。
この3つの要件をすべて満たしていなければ、障害年金は受給できません。ただし20歳前障害の場合は保険料納付要件は問われません。
障害基礎年金は、1級、2級の障害等級に該当する場合に支給されます。いっぽう障害厚生年金の場合は1級、2級、3級で支給されます。この障害等級は、国民年金法施行令別表、及び厚生年金保険法施行令別表に定められています。
また障害認定基準が、日本年金機構から公開されています。
障害年金の申請手続はとても複雑で、お一人おひとりに合った手続が必要です。また裁定請求には4つの方法があります。初めて手続をする場合は、どのような方法が一番有利かをよく考えましょう。年金事務所か市町村役場(国民年金1号のみ)の窓口で相談する場合は、何度も相談に行くことになり3ヵ月位はすぐ経過すると思います。その点は専門の社労士にお任せいただければ、短期間でスピーディに、その上、最も有利な方法で支援させていただくことが可能です。
申請手続の流れは、一般的には次のようにいたしますが、お一人おひとり違います
1. お客様をお訪ねし、手続の流れと料金のことをご説明いたします
2. 障害年金が受給できるのか、3つの受給要件に該当するのかを確認します
3. 病歴・就労状況等申立書の素案を作成します
4. 初診とは違う医療機関に診断書をお願いする場合は、初診日の証明をお願いします
5. 医療機関を訪問し、診断書等をお願いします
6. 病歴・就労状況等申立書を見直します
7. その他の必要書類を揃えます
8. 裁定請求書、及び必要書類一式を提出します
裁定請求には次のように4つの方法があります。
① 障害認定日請求
② 事後重症請求
③ 20歳前障害の請求
④ 初めて2級の請求
令和7年度(令和7年4月分~令和8年3月分)の年金額が厚生労働省より1月24日に公表されました。
この表は生年月日が昭和31年4月2日以降生まれの方の金額です。
令和 7年度 の年金額(年金の振込は令和7年6月13日から)
前年度から1.9%の引き上げ(増額)です(障害基礎年金2級の金額は、老齢基礎年金の満額と同額)
種 類 | 年 金 額 (単位:円) | 備 考 |
障害基礎年金 1級 | 1,039,625(月86,635) | 2級の1.25倍 |
障害基礎年金 2級 | 831,700(月69,308) | 老齢基礎年金の満額と同額である |
障害厚生年金 3級 | 623,800(月51,983) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
障害手当金 一時金(厚生年金のみ) | 1,247,600 (一時金) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
1、2級の場合の子の加算 1人目 | 239,300(月19,941) | |
1、2級の場合の子の加算 2人目 | 239,300(月19,941) | |
1、2級の場合の子の加算 3人目以降 | 79,800 (月6,650) | 3人目以降は、1人につき79,800円である |
障害厚生年金1、2級の配偶者加算 | 239,300(月19,941) | 配偶者が年金受給権有りの場合は停止になる場合が多い |
特別障害給付金 1級 | 682,200(月56,850) | 任意加入期間に未加入であった方などが対象 |
特別障害給付金 2級 | 545,760(月45,480) | 任意加入期間に未加入であった方などが対象 |
年金生活者支援給付金 1級 | 81,756(月6,813) | 消費税率10%引き上げ時(2019年10月)から給付となった (前年の所得が4,721,000円+扶養親族数×38万円以下の方など) |
年金生活者支援給付金 2級 | 65,400(月5,450) | 消費税率10%引き上げ時(2019年10月)から給付となった (前年の所得が4,721,000円+扶養親族数×38万円以下の方など) |
障 害 児 福 祉 手 当 | 193,200(月16,100) | 20歳未満、重度の障害がある在宅の児童に対して支給 |
特別児童扶養手当 1級 | 681,600(月56,800) | 20歳未満、在宅障害児の父母等に支給、父母等の所得が一定額以上の場合は支給されない |
特別児童扶養手当 2級 | 453,960(月37,830) | 20歳未満、在宅障害児の父母等に支給、父母等の所得が一定額以上の場合は支給されない |
特 別 障 害 者 手 当 | 355,080(月29,590) | 20歳以上、在宅重度障害者対象、配偶者又は扶養義務者の所得が一定額以上の場合は支給されない |
★ 都道府県によっては、国の基準にプラスαの障害者手当を支給してくださる場合もあります。詳しくは、お住まいの市区町村役場にお尋ねください。
令和 6年度 の年金額(ご参考までに)
同じく昭和31年4月2日以降生まれの方の金額
種 類 | 年 金 額 (単位:円) | 備 考 |
障害基礎年金 1級 | 1,020,000(月85,000) | 2級の1.25倍 |
障害基礎年金 2級 | 816,000(月68,000) | 老齢基礎年金の満額と同額である |
障害厚生年金 3級 | 612,000(月51,000) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
障害手当金 一時金(厚生年金のみ) | 1,224,000 (一時金) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
1、2級の場合の子の加算 1人目 | 234,800(月19,566) | |
1、2級の場合の子の加算 2人目 | 234,800(月19,566) | |
1、2級の場合の子の加算 3人目以降 | 78,300 (月6,525) | 3人目以降は、1人につき78,300円である |
障害厚生年金1、2級の配偶者加算 | 234,800(月19,566) | 配偶者が年金受給権有りの場合は停止になる場合が多い |
特別障害給付金 1級 | 664,200(月55,350) | 任意加入期間に未加入であった方などが対象 |
特別障害給付金 2級 | 531,360(月44,280) | 任意加入期間に未加入であった方などが対象 |
年金生活者支援給付金 1級 | 79,656(月6,638) | 消費税率10%引き上げ時(2019年10月)から給付となった (前年の所得が4,721,000円+扶養親族数×38万円以下の方など) |
年金生活者支援給付金 2級 | 63,720(月5,310) | 消費税率10%引き上げ時(2019年10月)から給付となった (前年の所得が4,721,000円+扶養親族数×38万円以下の方など) |
障 害 児 福 祉 手 当 | 188,280(月15,690) | 20歳未満、重度の障害がある在宅の児童に対して支給 |
特別児童扶養手当 1級 | 664,200(月55,350) | 20歳未満、在宅障害児の父母等に支給、父母等の所得が一定額以上の場合は支給されない |
特別児童扶養手当 2級 | 442,320(月36,860) | 20歳未満、在宅障害児の父母等に支給、父母等の所得が一定額以上の場合は支給されない |
特 別 障 害 者 手 当 | 346,080(月28,840) | 20歳以上、在宅重度障害者対象、配偶者又は扶養義務者の所得が一定額以上の場合は支給されない |
令和 5年度 の年金額 (ご参考までに)
同じく昭和31年4月2日以降生まれの方が対象
種 類 | 年 金 額 (単位:円) | 備 考 |
障害基礎年金 1級 | 993,750(月82,812) | 2級の1.25倍 |
障害基礎年金 2級 | 795,000(月66,250) | 老齢基礎年金の満額と同額である |
障害厚生年金 3級 | 596,300(月49,691) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
障害手当金 一時金(厚生年金のみ) | 1,192,600 (一時金) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
1、2級の場合の子の加算 1人目 | 228,700(月19,058) | |
1、2級の場合の子の加算 2人目 | 228,700(月19,058) | |
1、2級の場合の子の加算 3人目以降 | 76,200 (月6,350) | 3人目以降は、1人につき76,200円である |
障害厚生年金1、2級の配偶者加算 | 228,700(月19,058) | 配偶者が年金受給権有りの場合は停止になる場合が多い |
令和 4年度 の年金額 (ご参考までに)
令和4度までは、昭和31年4月2日以降生まれの方 と 昭和31年4月1日以前生まれの方は同額
種 類 | 年 金 額 (単位:円) | 備 考 |
障害基礎年金 1級 | 972,250(月81,020) | 2級の1.25倍 |
障害基礎年金 2級 | 777,800(月64,816) | 老齢基礎年金の満額と同額である |
障害厚生年金 3級 | 583,400(月48,616) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
障害手当金 一時金(厚生年金のみ) | 1,166,800 (一時金) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
1、2級の場合の子の加算 1人目 | 223,800(月18,650) | |
1、2級の場合の子の加算 2人目 | 223,800(月18,650) | |
1、2級の場合の子の加算 3人目以降 | 74,600 (月6,216) | 3人目以降は、1人につき74,600円である |
障害厚生年金1、2級の配偶者加算 | 223,800(月18,650) | 配偶者が年金受給権有りの場合は停止になる場合が多い |
令和 3年度 の年金額(ご参考までに)
昭和31年4月2日以降生まれの方 と 昭和31年4月1日以前生まれの方も同額
種 類 | 年 金 額 (単位:円) | 備 考 |
障害基礎年金 1級 | 976,125(月81,343) | 2級の1.25倍 |
障害基礎年金 2級 | 780,900(月65,075) | 老齢基礎年金の満額と同額である |
障害厚生年金 3級 | 585,700(月48,808) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
障害手当金 一時金(厚生年金のみ) | 1,171,400 (一時金) | これは最低保障額でありこれより多い場合もある |
1、2級の場合の子の加算 1人目 | 224,700(月18,725) | |
1、2級の場合の子の加算 2人目 | 224,700(月18,725) | |
1、2級の場合の子の加算 3人目以降 | 74,900 (月6,241) | 3人目以降は、1人につき74,900円である |
障害厚生年金1、2級の配偶者加算 | 224,700(月18,725) | 配偶者が年金受給権有りの場合は停止になる場合が多い |
★ 遡及返還についての注意事項
障害年金は、障害認定日に受給権が発生する方の場合、遡り受給が可能となる場合もあります。ただし注意が必要なことは、それまで受給してきた配偶者の加給年金、ご自分の労災年金調整部分、傷病手当金、児童扶養手当、生活保護費などの一部 遡及返還(返しなさいと通知が届く)ということも起こり得ることです。知らないで手続をしますと、1,2年後の忘れた頃になって、突然痛い目に遭うようです。年金事務所では詳しく説明しており、「説明済事項」についての書面を渡しています。でも、一度にたくさんのことを説明されても意味が分からず、まさかマイナスになる重大リスクの説明をご自分が受けていたなど、考えられなかったそうです。
ところが1,2年後にある日突然、1~4百万円を返還するようにという請求書が役所から届くのです。社会保険労務士に依頼せずご自分で手続をなさる方は、このようなリスク管理も自己責任です。3級は加給年金がゼロだからと安心していると、3級でも児童扶養手当が停止されてビックリすると思います。(児童扶養手当は平成26年12月から差額支給に改正されましたが、減額無しの方もいます。また労災年金は支給開始時から調整されますが調整比率 0.88 0.83 0.73 等が違う場合、そしてこちらも減額無しの場合は注意が必要です。)このような原因によって労災年金調整部分と児童扶養手当を遡及返還させられてマイナスになってしまった方もいます。(マイナスということは、障害年金の受給権が発生したことによって、逆に出費の方が多くなったという意味です。一度受給権が発生した後は、元に戻すことができません。本当にあった怖い話です。脅しの意図などぜんぜんありません。R2年5月1日からの新請求書4頁目には、一番下に3行小さく児童扶養手当のみ注意書きがプラスされました。でも、とても小さいので見落とした場合は、やはり自己責任です。)
ところで、配偶者の方が老齢年金および諸手当等を受給している場合も、請求手続前に、ご夫婦合計受給予想額をシミュレーションしてみる必要があります。障害厚生年金は3級でも配偶者加給年金が停止になります。つまり障害年金の遡及受給であれば、配偶者加給年金も遡及返還しなければならないのです。
配偶者の方に加給年金が加算されている方で60歳~64歳の方の場合は、障害者特例を選択した方が有利な場合もあります。理由は加給年金が停止にならないからです。但し、定額部分の金額(ほぼ勤続年数に比例)によっても違いますし、加給年金の額によっても違いますので、お一人おひとりで違います。(加入年数20年以上か否か、による加給年金の有無も勿論考慮する必要があります)
更に話は飛躍しますが、ご家族勤務先の扶養家族手当対象になっているかどうか、健康保険の扶養家族対象かどうか(障害年金自体は非課税でも年180万円以上は扶養を外れる)などの総合的な検討をしてから、障害年金の請求手続きをなさることをお勧めいたします。ご自分で手続をした後になって、やっぱり総額が減ってしまったというご相談を受けたこともあります。但し障害年金を選択しない方が有利であっても、受給権(2級)だけは64歳11ヵ月までに確保しておいた方が良い場合も稀にあります。理由は65歳に達すると事後重症請求が出来ないからです。高齢になるとやはり足腰が弱くなり、視力・聴力の障害が進んで1級になることもあります。R1.10.1消費税10%UPによって導入された支援給付金の金額も、年額63,720円(2級) から79,656円(1級)(令和6年度額) に上がりました。もしも老齢年金よりも障害年金1級の方が金額が多くなる方は、2級受給権だけを64歳11ヵ月までに取得しておいて、選択しなければ良いだけの話です。もう、これ以上の難しい話になると、年金事務所に伺うのは無理ですから、障害年金専門の社会保険労務士(社労士全体の僅か約2%)を、どうぞ活用してください。